子どものアトピー性皮膚炎とは|診断・治療・付き合い方を皮膚科医が解説

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アトピー性皮膚炎は「治らない病気」ではなく、良い状態を保ち続ける病気です。治療の目標も、根っこから消し去ることではなく、「症状がないか、あっても日常生活に支障がなく、薬もあまり必要としない状態」を維持することに置かれています。この記事では、どういう病気なのか、治療は何をするのか、家庭で何ができるのかを、順に整理します。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療の判断に代わるものではありません。治療方針は必ず主治医とご相談ください。

目次

どういう病気か

かゆみのある湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。背景にあるのは、皮膚のバリア機能が弱いことと、炎症を起こしやすい体質の組み合わせです。片方だけでは説明がつかず、両方があるために、外からの刺激に反応して湿疹が繰り返されます。

日本皮膚科学会の定義・診断基準では、次の3つがそろうことが必要とされています。

  • かゆみがある
  • 特徴的な皮疹と、その分布がある
  • 慢性・反復性の経過をとる(乳児では2か月以上、それ以外の年齢では6か月以上)

出る場所は、年齢とともに変わります

時期 出やすい場所 見た目の特徴
乳児期 頭・顔から始まり、体幹や手足へ広がる 赤みが強く、ジュクジュクしやすい
幼児・学童期 首、肘の内側、膝の裏 カサカサし、繰り返すうちに厚くゴワゴワしてくる
思春期以降 上半身、顔、首 乾燥が強く、くすんだ色調になることも

肘の内側や膝の裏など、曲がる部分に出やすいのが特徴です。乳児期はまだこの分布がはっきりせず、顔や頭から始まることが多いため、乳児湿疹との区別がつきにくい時期があります。

治療は、3つの柱で考えます

どれか1つだけでは回りません。3つそろって、はじめて安定します。

1. スキンケア(土台)

やさしく洗って、しっかり保湿する。地味ですが、ここが崩れていると薬の効きも落ちます。

外来で見ていていちばん多いのは、保湿の量が足りていないケースです。「ちゃんと塗っています」とおっしゃる方でも、必要量の半分以下ということは珍しくありません。量の測り方は保湿剤は「どれだけ」塗ればいい?大人と子どものFTU目安にまとめています。種類の選び方は子どもの保湿剤の選び方にまとめています。市販品で迷う場合はミノンとキュレルの比較も参考にしてください。洗い方は子どものボディソープは毎日必要?をご覧ください。冬の湯温と入浴時間については冬のお風呂は何度で何分?にまとめました。

2. 薬物療法(炎症を抑える)

中心になるのはステロイドの外用薬です。強さは5段階に分かれていて、湿疹の重症度と部位に応じて使い分けます。5段階の内訳と、顔とからだで薬が変わる理由はステロイド外用薬の強さは5段階にまとめています。

ここで一点、強調しておきたいことがあります。「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」でも指摘されているのですが、顔だから、子どもだから、という理由だけで弱いランクを選んでしまうのは、かえって経過を長引かせます。選ぶ基準は年齢や部位ではなく、いま出ている湿疹の重症度です。適切なランクで短期間しっかり抑え、良い状態にしてから下げていく——このほうが、結果的に使う総量は少なくて済みます。

ステロイド以外の外用薬(タクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏、ジファミラスト軟膏など)もあり、部位や年齢に応じて選択肢になります。中等症以上では注射薬や内服薬も使えるようになりましたが、多くは対象年齢が決まっているため、小児では適応の確認が必要です。

プロアクティブ療法

湿疹が落ち着いたあと、薬を完全にやめてしまうと、同じ場所がまた悪くなることがよくあります。症状が出たときだけ塗る方法をリアクティブ療法といいますが、これだと良くなったり悪くなったりを繰り返しやすくなります。

そこで、良くなった皮膚にも週2回程度など間隔をあけて塗り続け、再燃そのものを防ぐ方法があります。これがプロアクティブ療法です。「悪くなったら塗る」から「悪くならないように塗る」への切り替えで、塗る量も回数も、結果的には減っていきます。

アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法の図解。症状が出たときだけ塗るリアクティブ療法では良くなったり悪くなったりを繰り返すのに対し、プロアクティブ療法では炎症を抑える塗り薬を間隔をあけて続けることで再燃しにくい状態を目指す。悪化しているときは毎日しっかり塗り、よくなったら医師の指示に合わせて週2回などに減らし、保湿剤は毎日続ける。
リアクティブ療法とプロアクティブ療法の違いと、塗り方の進め方

ポイントは、保湿剤は毎日続けたまま、炎症を抑える塗り薬だけを段階的に減らしていくことです。使う薬、塗る回数、続ける期間は症状によって変わりますので、主治医と相談しながら決めてください。

3. 悪化因子を見つけて減らす

何がきっかけで悪くなるかは、お子さんごとに違います。よくあるのは次のようなものです。

  • 汗(かいたまま放置する)
  • 乾燥、季節の変わり目
  • 衣類のこすれ(タグ、ウール、化繊)
  • よだれ、食べこぼし
  • 掻くこと自体(掻く→悪化→さらにかゆい、の悪循環)
  • ハウスダスト、ダニ

秋から冬は乾燥が強まり、アトピー性皮膚炎の悪化に乾燥そのものによる湿疹が重なることもあります。その見分け方は秋の乾燥性湿疹|かゆがり始める前のサインで整理しています。

ひとつ注意していただきたいのは食物です。自己判断で食物を除去しないでください。成長に必要な栄養に直接関わりますし、除去が必要かどうかの判断には検査と診察が要ります。必ず医師に相談してから決めてください。

「いつ治りますか」への答え

多くのお子さんは、成長とともに軽くなっていきます。ただし個人差が大きく、「何歳で治ります」と約束できるものではありません。

そのうえで申し上げたいのは、「いつ治るか」より「今どれだけ良い状態を保てているか」のほうが、はるかに大事だということです。掻かずに眠れているか。日中、かゆみを気にせず遊べているか。この2つが保てていれば、治療はうまくいっています。数年後の心配より、今週の睡眠のほうを見てください。

こんなときは相談を

  • 市販の保湿剤だけで、2週間続けても変わらない
  • かゆみで夜眠れない、何度も起きる
  • ジュクジュクしている、黄色いかさぶたが広がっている(とびひを合併している可能性)
  • 塗り薬をもらっているのに良くならない(量・ランク・回数が合っていないことがあります)
  • 顔の赤みが引かない

4つめは特に、遠慮せず伝えてください。「効かない」という情報は、治療を組み直すために必要な情報です。

よくある質問

ステロイドを使うと皮膚が黒くなりませんか?
色素沈着は、炎症が起きたあとに残るもの(炎症後色素沈着)で、ステロイド自体の作用ではありません。むしろ炎症を長く放置したほうが残りやすくなります。
一生使い続けることになりますか?
いいえ。良い状態を保てるようになれば、塗る頻度は下げていけます。プロアクティブ療法は、そのための方法です。
遺伝しますか?
体質は関係しますが、親にあれば必ず子どもに出る、というものではありません。
プールや保育園は制限が必要ですか?
基本的に制限は不要です。掻き壊しからとびひを合併しているときは、その期間だけ相談してください。プールのあとは、塩素を洗い流して保湿を。

まとめ

  • 目標は「根治」ではなく、良い状態を保つこと
  • 治療はスキンケア・薬・悪化因子の3本柱。1つでは足りません
  • ステロイドのランクは、年齢や部位ではなく重症度で選びます
  • 良くなってからも間隔をあけて塗り続けると、再燃を防げます
  • 食物の除去は、必ず医師と相談してから

参考資料

  • 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン策定委員会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」
  • 日本小児アレルギー学会「小児のためのアトピー性皮膚炎の予防と治療の手引き(小児アトピー性皮膚炎治療・管理ガイドライン2024)」
  • 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎の定義・診断基準」

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この記事を書いた人

皮膚科医。大学病院で一般皮膚科診療とレーザー治療に従事しています。自身も幼いころからアトピー性皮膚炎があり、敏感肌・乾燥肌と付き合ってきました。診療で大切にしているのは、その方にとってのBESTを一緒に探すこと。つらい症状を落ち着かせることも、肌が弱いからと諦めていた希望も、同じ肌についての大切な相談だと考えています。ご自身の肌を理解して、自分でも手当てできるようになるために。診察室では時間が足りない部分を、根拠とあわせて書いています。

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