産後の肌はなぜ荒れる?抜け毛・シミ・授乳中のケアを皮膚科医が解説

産後の肌と髪の変化。抜け毛・シミ・授乳中のケア

このブログは子どもの肌の話が中心ですが、今回はお母さん自身の肌の話です。

産後、それまでとは違う肌の変化に戸惑う方はとても多くいます。そのほとんどは、ホルモンの急激な変化で説明がつきます。そして多くは時間とともに戻ります。ただし、戻らないものもあります。その線引きを整理します。

この記事の要点

  • 産後の肌の変化の多くは、妊娠中に上がっていたホルモンが急に下がることで起きる
  • 抜け毛は産後2〜3か月から始まり、半年〜1年で落ち着くのが典型
  • 授乳中の美容治療は、可否がはっきり決まっていないものが多い

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療の判断に代わるものではありません。授乳中の薬の使用については、主治医にご確認ください。

目次

産後、肌に何が起きているのですか?

妊娠中、女性ホルモンは通常では考えられないほど高い値になります。エストロゲンは妊娠後期におよそ100倍、プロゲステロンは15倍ほどにまで上がるとされます。

そして出産を境に、これが一気に元の水準へ落ちます。数か月かけて上がったものが、数日で下がるわけです。肌や髪は、この落差にそのままさらされます。

加えて、睡眠がまとまって取れない、食事が不規則になる、日中ずっと抱っこをしている。ホルモンの変化と生活の変化が同時に来るのが産後です。

抜け毛は、いつまで続きますか?

産後の抜け毛(分娩後脱毛症)は、出産を経験した方の8割以上に起こるといわれます。まず、珍しいことではありません。

仕組みはこうです。髪には成長期・退行期・休止期という周期があり、通常は一部ずつが順番に抜けています。ところが妊娠中は、エストロゲンの働きで成長期が引き延ばされ、本来抜けるはずだった髪が抜けずに留まります。出産でホルモンが下がると、留まっていた髪がいっせいに休止期へ移り、まとめて抜ける。これが産後の抜け毛の正体です。

時期 起きること
産後2〜3か月 抜け毛が始まる
産後3〜6か月 いちばん多い時期
産後6か月〜1年 落ち着いてくる
産後1年以上 続くようなら相談を

つまり、抜けているのは「新しく生えた髪」ではなく、「抜ける時期が先送りされていた髪」です。新しく育っている髪が失われているわけではないので、多くは自然に戻ります。

ただし1年以上たっても戻らない場合は、別の脱毛症が重なっていることがあります。鉄が不足していたり、甲状腺の機能が関わっていたりすることもあるので、その段階では調べる価値があります。

シミが濃くなった気がするのですが

妊娠中は色素沈着が起こりやすくなります。頬の肝斑、乳輪や外陰部の色の濃さ、おなかの正中線。これらは妊娠中のホルモンによるもので、産後に薄くなっていくものが多いとされています。

ただし肝斑は、産後もそのまま残ることがあります。そして肝斑を悪化させるいちばんの要因は紫外線と摩擦です。授乳中で使える薬が限られる時期だからこそ、日焼け止めと、こすらないことが実質的な治療になります。

お子さんの日焼け止めを塗るついでに、ご自身にも塗ってください。子どもの紫外線対策については子どもの日焼け止めの選び方にまとめています。

授乳中でも使えるものはありますか?

基本的な考え方として、外用薬は塗った場所で働くものが多く、全身に回る量はごくわずかです。そのため使えるものは少なくありません。ただし、いくつか注意すべき点があります。

授乳中の扱い
保湿剤全般 問題なく使えます
日焼け止め 問題なく使えます。むしろおすすめです
胸・乳輪に塗るもの 授乳前に拭き取るなど配慮が必要です

では、これ以外——ビタミンA誘導体(レチノイド)の外用、ハイドロキノン、飲み薬や点滴による美容治療、レーザーなどの処置——はどうかというと、「はっきり決まっていない」というのが正直なところです。

理由は単純で、授乳中の方を対象にした研究がほとんどないからです。妊娠中のデータから推定したり、母乳に移行する量を実際に測った報告がないまま「おそらく大丈夫」「念のため避ける」と判断されていたりします。2026年に発表された総説でも、授乳中については「全身に入る量がごくわずかなら検討しうる」「個別に判断する」といった書き方にとどまっています。

Kovacs T, et al. Cosmetic Dermatology in Pregnancy and Lactation: A Risk–Benefit Framework for Clinical Practice. Int J Dermatol. 2026. doi:10.1111/ijd.70620

ですので、この記事では一つひとつの可否を表にしません。やりたい治療がある場合は、授乳中であることを必ず伝えたうえで、担当の医師と個別に相談してください。この話題は改めて1本の記事として整理する予定です。

原則は一つです。迷う治療より、確実に安全でいま効くこと——保湿、日焼け止め、こすらない——を先にやる。産後の数か月は、攻める時期ではありません。

いま、やって損がないこと

  • 日焼け止めを塗る。肝斑にも、将来のシミにも効きます
  • こすらない。洗顔もタオルも、摩擦が色素沈着を悪くします
  • 保湿する。手洗いと消毒が増える時期で、手荒れが起きやすくなっています
  • 髪型で乗り切る。抜け毛の時期は数か月です。分け目を変える、短くするのは現実的な対処です
  • 鉄を意識する。産後は不足しやすく、抜け毛にも肌にも関わります

こすらずに洗うという点では、泡立ててから使う洗顔料のほうが扱いやすいことがあります。実際に使ったものはdプログラム エッセンスイン クレンジングフォームのレビューにまとめました。

まとめ

  • 産後の肌と髪の変化の多くは、ホルモンが急に下がることで説明がつきます
  • 抜け毛は8割以上に起こり、産後2〜3か月から始まって半年〜1年で落ち着くのが典型です
  • 1年以上続くなら、別の原因を調べる価値があります
  • 肝斑は残ることがあり、日焼け止めと摩擦を避けることがいちばんの対策です
  • 授乳中は迷う治療を急がず、確実に安全なことから始めてください

お子さんの肌のことで頭がいっぱいの時期だと思いますが、ご自身の肌も同じように変化しています。いま無理に治そうとしなくていいものと、いまから始めておくと差がつくものを分けて考えていただければと思います。

参考にした資料

  • 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A
  • 日本臨床皮膚科医会・日本皮膚科学会 合同 肝斑に関する資料
  • Kovacs T, et al. Cosmetic Dermatology in Pregnancy and Lactation: A Risk–Benefit Framework for Clinical Practice. Int J Dermatol. 2026. doi:10.1111/ijd.70620
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この記事を書いた人

皮膚科医。大学病院で一般皮膚科診療とレーザー治療に従事しています。自身も幼いころからアトピー性皮膚炎があり、敏感肌・乾燥肌と付き合ってきました。診療で大切にしているのは、その方にとってのBESTを一緒に探すこと。つらい症状を落ち着かせることも、肌が弱いからと諦めていた希望も、同じ肌についての大切な相談だと考えています。ご自身の肌を理解して、自分でも手当てできるようになるために。診察室では時間が足りない部分を、根拠とあわせて書いています。

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